薬店で質問を受けるBEST3のひとつ。「どうしたら、いい卵ができますか?」
こんにちは。この記事を開いてくださったあなたは、今まさに妊活をされている方か赤ちゃんを近い将来望まれる方でしょう。
その中でも、不妊治療専門クリニックですでに治療を受けられておられる方が多いのではないでしょうか?
クリニックでは、タイミング法や採卵をするために、生理が始まり3日目に受診して次に排卵する卵が見えているかどうかエコーで調べてもらいます。
「2つ見えていますよ」と言われることもあれば1つも見えないこともあります。そして、10日目くらいに再びクリニックを訪れ卵の様子を調べてもらい、排卵のタイミングや採卵日が決まります。
その間に卵がなかなか成長しなかったり、見えていたはずの卵が消えてしまったり。また、採卵した後の受精卵のランクを見るにつけても、不妊治療を受けていると私たちは卵子の質を意識する機会が多いといえます。
では、一緒に考えてみましょう。
【赤ちゃんを授かるためには、何が必要でしょうか?】
〇女性もパートナーも健康な体であること
そうですね。では、なぜ共に健康な体である必要があるのでしょうか?
もちろん、器質的に健康であることが第一ですが、疾患がなくても赤ちゃんがなかなか授からないことがあるのです。
では、いったい何が必要なのでしょうか。
①質の良い卵②元気な精子③子宮の環境(ふかふかの子宮内膜)です。妊活を始められてお勉強されている方にはすでにご存じの話かと思います。
【質の良い卵とは?】
では、質のいい卵ってどんな卵なのでしょう?
・精子と出会って受精して、細胞分裂を続けて、孵化し着床して、赤ちゃんが育つ卵のことです。
これは、残念ながら顕微鏡で見ても外からではわかりません。成熟した卵子は人間の細胞の中で一番大きな細胞と言われています。肉眼で見ることのできる唯一の細胞なのです。この卵子の中には精子からもらうDNA以外の赤ちゃんが育つために必要な卵子のDNAや栄養のほか大切な成分が詰まっているのです。
【卵子の老化とは】
最近、不妊の原因の一つに卵子の老化があげられています。卵子は女性が生まれる前のお母さんのお腹の中にいるときにすでに作られ、それ以後は作られることはありません。原始卵胞という状態で生まれる前には卵巣に約200万個蓄えられていますが、毎日卵子は自然消滅をしていきます。思春期を迎えるころには約20~30万個までに減っていると言われています。その後も1回の生理周期で約1000個の卵子が消滅しているのです。
さて、このように原始卵胞は、生まれたときにはすでに作られているわけですから、あなたの卵子はあなたの年齢と同じだけ年を重ねてきているわけです。つまり、あなたの年齢が30歳ならば、卵子は30歳の細胞なのです。
【卵子が老化するとどんなことが起こるの?】
1.排卵が行われても卵子が卵子としての機能を失っていることが多くなる
2.染色体(細胞の設計図であるDNA)に異常を持った卵子が増えてしまう
3.染色体異常を持つ卵子は受精卵になっても育たない、育っても着床しない
4.着床しても流産するリスクが高くなる
【質の良い卵って作るのは不可能なの?】
いくらエステに通って若返っても卵の年齢を若くすることはできません。それって、夢も希望もない話ですよね。
でもね、少し希望の持てるお話をいたしましょう。
実は、排卵する卵子の成長は約180日(6か月)かかるのです。
卵巣の中で眠っていた原始卵胞が約120日かけて大きくなり一次卵胞、二次卵胞(前胞状卵胞)に成長します。そして、ホルモン(FSH)の影響を受けて二次卵胞(胞状卵胞)へと大きくなります。卵胞の大きさが直径8mmを超えると卵胞からE2が分泌され18~20mmほどの成熟卵胞へと成長し、通常1個の卵胞が排卵されます。
前胞状卵胞から排卵まで約90日かかると言われています。
良い卵をつくるために私たちができることは、この眠りから覚めた原始卵胞が成熟卵胞に成長する過程を生活習慣を整え大事に過ごすことです。
【卵子の老化を防ぐ方法】
1.細胞の酸化を防ぎましょう
ストレスを溜めこまないようにしましょう。ストレスも活性酸素(体の細胞をサビさせる)を発生させる要因のひとつです。細胞の老化や染色体異常のリスクが高くなるほか、結果的にホルモンバランスも乱れ、卵子の質にも大きな影響を及ぼします。また、食事では野菜や果物をしっかりと食べましょう。野菜や果物には抗酸化作用を持つビタミンA、C、Eなどのビタミンが豊富で、卵子の老化につながる細胞の酸化を予防してくれます。(ただし、果物には果糖が含まれているので食べすぎには注意しましょう)
2.体を冷やさないようにしましょう
体が正常に働くためには一定の体温が必要です。質の良い卵子を作ることにもそれは当てはまります。卵子の中に多く含まれるミトコンドリアは温かい環境で活性化しますので、体を温めると卵子の質も良くなり、結果的に卵子の老化を遅らせることにつながります。
3.食事のとり方を考えましょう
冷たい食べ物や体を冷やす性質の食べ物はできるだけ控えましょう。肉食や甘い物の摂りすぎも血液を汚し、血流を滞らせて卵子の質を下げてしまいます。卵子のエネルギーを生み出すミトコンドリアを活性化させる働きがあるカリウムの多い野菜や果物を摂ることで、卵子の質も良くなります。
糖分の摂りすぎは、体を冷やすばかりか余分な糖とタンパク質が結びつくと「糖化」というタンパク質の変性が起こります。糖の摂りすぎには十分な注意が必要ですね。
4.適度な運動をしましょう
体を動かすことで、血行を促進し卵子が作られる卵巣の血流アップにつながり、卵子の質が良くなります。
5.よい睡眠をとりましょう
眠ることで体内の修復や回復に働く成長ホルモンが分泌され、代謝活動が促進されます。自律神経も昼間の交感神経亢進から副交感神経優位に働きストレスからも回復します。
また、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンには高い抗酸化作用があります。細胞の老化、染色体異常から予防してくれます。
6.中医学的卵胞を育てる期間(低温期)の食養生
気(エネルギー)や血を補う食材を食べましょう。
気を補う食材は、土に植えて芽の出る生命エネルギーを蓄えたもの。つまり穀類、イモ類、豆類です。炭水化物が気になる方もおられますが、三大栄養素の一つ。大事な栄養素ですので食べ過ぎに注意しながら摂ってくださいね。
血を補う食材は、赤身の肉類やほうれん草や小松菜などの青い葉野菜です。
また、腎(成長、発育、生殖機能、蔵精を担う)を補う黒い色の食材です。黒豆、黒ごま、干しぶどう、プルーン。海の塩辛い味の物、魚介類、わかめ、昆布、ひじきなどもお勧めです。
いい卵が作られると、染色体異常のリスクを予防できるばかりではありません。排卵した後の卵胞が黄体化してプロゲステロンという受精卵が着床しやすいように子宮内膜の環境を整える女性ホルモンに変わります。いい卵であるとしっかりとプロゲステロンが放出され、高温期を維持してくれるのです。プロゲステロンの分泌量が少ないと、基礎体温の高温期が10日間未満となり「黄体機能不全」という診断を受けます。
クリニックでのホルモン補充という方法もありますが、クリニック任せにするだけではなく、生活習慣を見直して、いい卵をつくる体づくりをされて妊娠力を上げていただきたいと願うのです。