妊活さんのための秋の養生法
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、秋は一年でもっとも過ごしやすい季節です。初秋は、夏の暑さで消耗したエネルギーを補い、秋雨前線到来の不安定な気候を乗り越えるようにしましょう。中秋、晩秋は寒暖差や乾燥を迎える季節になるので、しっかりと肺を潤し風邪に負けない体をつくり、寒い季節に備えていきましょう。
はじめに(中医学の養生法とは)
中医学(中国の伝統医学)では、「人間の体は自然界との密接な関係を持っていて、体内のすべての部分が自然や宇宙とつながり、統一され、全体として成り立っている」という考え方があります。自然界に変化がおきると人間はその影響を受け、変化に適応しようとします。適応できなくなった時には不具合が発生して、健康を損なうという考えです。
中国の最古の医学書「黄帝内経」の秋の対処法
2000年以上も前に誕生した中国最古の医学書「黄帝内経」には「昔の人は百歳を超えても衰えはなかった」という書き出しで始まり、古人が自然界の変化や病気にどのように対応したのかが書き記されています。
そこには、秋は「収斂(しゅうれん)」の季節であり、万物が成熟して収穫される季節である。徐々に空からは強い風が吹き、台地には粛清とした気配が漂う。
この季節には、鶏の寝起きのように、早く寝て早く起きることであり、心を安らかにして、悔やまず精神を落ち着かせて、秋の気が身体を損なうことのないようにし、やたらと動きまわって、肺を冷やさないようにする。これが秋の季節に調和した養生法であります。
もし、養生法に逆らって、精神を動揺させたり、秋の冷えにあたり肺を冷やしたりすると肺を損傷したり、冬になって下痢をしたりします。」と述べられています。
妊活さんの秋の養生法とは
秋は夏までの盛んだった陽の気から陰の気へ入れ替わる過渡期です。陽の勢いが強かった夏には小さくなって出番を待っていた陰がバトンタッチを受けて走り始める時期にあたります。したがって、「陰」をしっかり養わなければなりません。
妊活さんの生理周期で考えると卵を育てる期間である、つまり基礎体温でいう低温期に「陰」が大事な働きをします。したがって、秋にしっかりと陰を養うことは質の良い卵を育てる意味からも大事ですよね。
- 春や夏より就寝時間を早めにし、睡眠時間をちゃんととりましょう。
日照時間が短くなってくる秋には夕方になれば活動を控えて、陰の時間を増やしていきましょう。夜遅くまで仕事をしたり、テレビを観たりして起きていると、陽が亢進状態のままで、陰を養うことができませんね。
西洋医学で考えると、交感神経が優位な状態が続くことになります。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れるとホルモン分泌にも影響が出てしまいます。
- 体の潤い、陰を補充しましょう(滋陰して陰虚を解消)
秋は乾燥する季節です。秋によく活動する「肺」は潤いを好み乾燥を嫌います。乾燥により「肺」がダメージを受けると免疫力も低下し、空咳や風邪や喘息などの呼吸器系疾患や肌荒れ、便秘などが現れやすくなります。
*ちなみに体を構成し生命活動を行う基本物質である「気(エネルギー)」「血(血液と血液が運ぶ栄養、ホルモンなど)」「水(血液以外の水分)」のうち「気」は陽で「血」と「水」は陰に分類されます。
このことからも、潤いを不足させないためにも陰を補うことは必要だとお分かりいただけると思います。
- 心おだやかに、気分転換をはかりましょう
秋はすがすがしく爽やかな季節ですが、一方では美しく紅葉した葉はやがて落ちで枯れていきます。わたしたちは物寂しさを感じ、情緒の不安定や感傷的になりやすい季節です。これらの情緒の不安定な状態は自律神経を乱し、ホルモン分泌を乱すことにつながります。卵の発育がうまくいかなかったり、排卵障害や高温期が十分に保てなくなります。
悲しみ過ぎると肺気を消耗し免疫力も下がってしまいます。
秋のトラブルは大きく分けて2つ
①寒暖差による秋風邪(食欲不振・だるさ・冷え)
②乾燥によるトラブル(肌・呼吸系)
=秋風邪の予防=
・皮膚呼吸を活発にして風邪を発散させましょう。
・乾燥が原因の粘膜の炎症を潤してあげましょう。
・お腹を温めたり、スタミナをつけて免疫力UP。
~おすすめ食材~
白ネギ 葛粉 生姜 梨 大根 うなぎ 山芋 にんにく ゆり根
=乾燥トラブル対策= 体の中から潤い美人
・肺の機能を活性化しましょう。
・肺の潤いアップして機能低下を防ぎましょう。
~おすすめ食材~ キノコ類・果物類・種子類
白きくら げ舞茸 しめじ 梨 ぶどう 桃 柿 無花果 りんご ぎんなん 落花生 アーモンド 栗 胡桃
~食材の効能 ひとくちメモ ~
*舞茸、松茸、椎茸、しめじなどきのこ類は肺を潤し、また含まれるβーグルカンはがん予防に働きます。食物繊維も豊富で腸内環境を改善してくれますよ。
*潤いUPなら白きくらげ、エリンギが一番!
*エリンギには葉酸も含まれています。妊活さんにはいいですね。
*柿と蟹はどちらも寒性食材。食べ合わせNG!体を冷やしすぎるので注意してね。
*補気力の高さは何といっても桃。体を温める性質の数少ない果物一つ。仙人の手にも桃が。
*いちじくは浣腸でおなじみ!肺も大腸もケア。お通じ出ます。だから食べ過ぎ注意してね。
*りんごは下痢にも便秘にもどうぞ!
*ナッツ類は油が豊富で便秘解消。ミネラルも豊富で妊活さんのおやつにはおすすめ。酸化しやすいので冷蔵庫で保管してね。
まとめ
秋の夜長と言いますが夏の疲れをとるためにも、意識して体を休める時期ですね。
今では年中おいしい食べ物が手に入りますが、昔は実りの秋にしっかりと食べて、食物の少なくなる冬に備えて体に栄養を蓄えていました。
冬に備えて「陰」をしっかり養うことが妊活においても大事であることはお解りいただけたかと思います。陰を養うことで、血も養われるんですよ。
日頃からの「睡眠」「心穏やかに過ごす」とともに、肺を潤し陰を養う「食事」にも気をつけてくださいね。陰を養うお話は次回冬の養生法で詳しくお話をいたしましょう。
記 薬剤師・和学薬膳🄬博士 森川彰子